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日を跨ぎ、次の日となった。
隆侍は昨日決まった自分の部屋で起床した。
寝ぼけた頭で、バッグと布団しかない殺風景な部屋を見渡した時は、見慣れない光景に困惑した隆侍だったが、頭が冴えてくると引っ越しをしてきた事実を思い出し、平静を取り戻した。
部屋から出て、居間へと移動する。
床にビニール袋が一つ置かれており、その中には数個の包装された惣菜パンが入っている。
昨日、高並家から帰宅する際に購入しておいたものだ。
隆侍はそこから一つだけ取り出して、包装を開ける。
ねじ込む様に口に詰め込むと即座に立ち上がり、自分のバッグの中から着替えを取り出した。
運動用のシャツとズボンを着た隆侍は、家の鍵だけをポケットに入れて玄関へと向かう。
玄関には昨日履いていたスニーカーだけでなく、ランニングシューズも置かれており、隆侍はそれに足を入れる。
「よし。行ってきます」
まだ愛守が寝ているので小声でそう言い、隆侍は静かに玄関のドアを押して開いた。
朝の日課として、隆侍はジョギングを怠らず行っている。
と言っても始めたのは、引っ越しで夕希原を離れてからなので、こっちで行うのは初めてである。
よって隆侍は何となくの地理感でルートを考える。
(……とりあえず今日はこんなルートでいいな。毎日走って行く内に良いルートが見つかるだろうし)
ストレッチで全身の筋肉を慣らしながらそう結論付け、隆侍は走り出した。
自分の知っている街並みとはほとんど変わっていない。
隆侍はそれを実感しながら、走り続ける。
すると、正面の遠くに大きな建物が見えてきた。
夕希原学園。
今日から隆侍が転入し、通うこととなる学園だ。
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