28人が本棚に入れています
本棚に追加
/438ページ
公立ならではの長い年月の経過を漂わせる幾つもの校舎。
良くも悪くも、一般的な学園といった感じだ。
ちなみに学力レベルは中の下、といったところだ。隆侍は運動能力は高いが、勉学は苦手なようだ。
当然、朝早いので人の気配は感じられない。
「ま、今回は行栖もいるし、平気だろ」
引っ越し先では思い切り避けられてしまったという過去を深く考えないようにして、隆侍は再び駆け出し始めた。
(次は、あそこか)
夕希原学園から見える、別の学園の校舎。
隆侍は次にそこを目指した。
夕希原とは比べ物にならない広大な敷地を誇る、巨大な学園。
私立桜花学園。
(やっぱすげえな……)
6年制の一貫校であり、入学試験が日本トップクラスの難しさだということで有名だ。
その上、学費も一般大学レベルにかかることもあり、通っているのは裕福な人間がほとんどだ。
しかし設備や環境は最上級であり、6年間通いきれば将来は完全に約束されると言って過言ではないすごい場所だ。
(子供の頃は何も思わずに近くを通ってたけど、今は迫力を感じるなあ)
年を経たからこそ感じるようになり、隆侍は自分がこの学園の目の前にいることが失礼になるのではないかといった不思議な感覚に襲われる。
(俺には一生縁のない学園だろうな……)
最後にそう結論付け、隆侍はジョギングを再開するのだった──。
─────
───
──
「えっ、美里ちゃんって桜花だったの!?」
数時間後、夕暮荘前にて隆侍の大きな驚きの声が響いた。
ジョギングを終わらせ、愛守と共に朝食を食べた後に、制服に着替えると行栖から電話が来て、「下で待ってるから一緒に行こうぜ」と言われて、下に降りてみると行栖だけではなく美里もいたわけなのだが、
その美里が来ていた制服が、桜花学園指定のセーラー服だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!