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「学費、大丈夫なのか?」
隆侍の一番の心配はそこだった。
高並家は決して裕福な家庭ではない。
両親を亡くし、その遺産と姉のまだ多くはない稼ぎで切り詰めなければならない赤渕家よりはマシだろうが、それでも桜花に通う余裕があるとは思えない。
「それがさ、美里のやつ特待生になってんだ。だから学費が全額免除」
「ぜ、全額!?」
再び隆侍は大きく驚愕する。
勿論口にした、多額の学費を全て免除する学園側の方もだが、やはり驚きの割合が大きいのはそれだけ凄い場所に親友の妹が通っているということだ。
(何だか、俺なんかよりずっと上の存在になっちゃったみたいだな……)
容姿、勉学、性格すべてがハイレベルな目の前の女の子を見て、隆侍は少し寂しい気持ちになる。
それを過敏に感じ取った美里が、慌ててフォローする。
「別に桜花の特待生だからって、ガリ勉になっちゃったわけじゃないですよ? 今でも昨日みたいにお兄ちゃんとよくゲームしてますから、私は私です! 気にすることありません!」
必死に弁明する美里のその言葉には裏などはなく、本心で言っている。
それを聞くと隆侍も少しだけ、寂しい気持ちが和らぐのを感じた。
「ああ、それは昨日理解したよ。じゃ、行こうか」
「はいっ!」
隆侍が普通の態度に戻ってくれたことで安心した美里は、笑顔になって頷いた。
そして二人の一歩後ろで歩く行栖は、相変わらず不敵な笑みを浮かべているのだった……。
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