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………………。
「今日からこのクラスの一員となる、赤渕隆侍くんだ」
「……宜しく」
職員室にて当日の手続きを終わらせ、編入先に教室にて教師に紹介された隆侍は、端的な挨拶をした。
隆侍には一つ誤算があった。
(行栖と別のクラスだったとは……)
知り合いの行栖と同じクラスに配属されるとばかり思っており、彼を通じて他の生徒と仲良くなれればと考えていた隆侍は、そこで出鼻を挫かれた気分になっていた。
ざっと教室内の生徒たちを見渡してみる。
──が、隆侍が視線を向けた瞬間、その生徒たちは一斉に顔を横に逸らしてしまう。
その反応は、以前の引っ越し先と何ら変わりはない。
(……ハア。だよなあ……)
心の中で溜め息を付きながら、教師に指し示られた空き机の方へと歩いていく。
隆侍はその椅子を引いてドサリと勢いを殺さずに座るのだった。
「ははっ、そりゃ災難だったなー!!」
「笑い事じゃないからな」
場面は飛んで昼休み、購買コーナーの脇にあるテーブルで弁当を食べつつ、隆侍の話を聞いた行栖が笑い声を上げた。
ちなみに席は埋まっていたはずなのだが、隆侍を見た生徒がすぐにどいて空けてくれた。
有難いといえば有難いのだが、隆侍には複雑だ。
「ま、次第に打ち解けるさ。深く考えるなよ!」
「……だと、いいけどな」
三年前、新天地で同じ目に遭った時には行栖と同じ様に考えていたが……結果は再転校するまでほぼ孤独に過ごすこととなった。
一人ぐらいは仲良くなれた人間はいたのだが、その人物とも今は疎遠になってしまっている。
それ故か、隆侍はこのことを前向きに考えることはできなくなっていた。
「頑張れ頑張れ」
「他人事だと思って……」
行栖は心にもない応援を言葉を口にしつつ、あんパンをもしゃもしゃと口に入れる。
それを聞いて隆侍は鋭い目付きを更に鋭くしつつ、カレーパンを乱雑に口に含んだ。
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