28人が本棚に入れています
本棚に追加
/438ページ
「んじゃ、皆気を付けて帰ってなー」
本日の授業、そしてホームルームが終わり、担任の教師が教室から出て行く。
その後、生徒たちもバラバラに立ち上がり、仲の良い友人たちと共に教室から抜ける。
周りに誰も寄り付かない隆侍は、行栖の元へ向かおう立ち上がろうとしたが、そこで制服のズボンのポケット内に入れていたスマートフォンがバイブレーションした。
取り出すと通知画面に、行栖からのSNSメッセージの新着が表示されている。
「行栖:悪い、用事あるから先帰っててくれ~」
「マジか……」
スマートフォンを握りながら、小さく呟く隆侍。
登校初日に孤独で帰ることになり、悲しい気持ちになってしまう。
しかし用事があると言われた以上仕方ないので、隆侍は一つ溜め息を吐いてから立ち上がり、昇降口へと向かった。
上履きからスニーカーに履き替え、昇降口の扉を押した隆侍は視線の先に何かを見つけた。
それは正門の先で夕希原学園の制服を着た男子生徒が、誰かを囲っている様子だった。
(……まさかリンチ、とかじゃないよな)
隆侍は推察しつつ、どの道正門から出なければならないので、レンガの道を歩いて現場へと近付いていく。
距離が縮まってくると、男子生徒らの様子が詳しく分かってきた。
どうやら、リンチをしている状況ではなさそうだ。
「ねえねえ、アドレス教えてよー。仲良くしようぜ?」
「そうそう。ここで会ったのも何かの縁っしょ! せっかくだし、このまま一緒に遊ばない?」
下品な笑みを浮かべた顔で、囲んでいる中心にいる誰かに話しかけている男たち。
(ナンパ、か……)
リンチより良かったのか悪かったのか、微妙なところだったので隆侍は困った表情をする。
関わる気はなかったのだが、野次馬根性で中心の人物を確認すると、隆侍は驚きの表情を浮かべた。
「あの、困ります。私はお兄ちゃんを待ってるだけですって、何回も言ってるじゃないですか」
そこに居たのは、年不相応に大きな胸を携えている親友の妹、美里だったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!