1st duel─再会と思い出のカード

17/43

28人が本棚に入れています
本棚に追加
/438ページ
(はあ……どれだけ誘っても乗る気はないのになあ) 高並美里はしつこい男子たちの下心丸出しの誘い文句に辟易としていた。 心の中で溜め息を吐き、美里は下げていた顔を上げて男子たちの表情を見る。 「来る気配ないんでしょ? 忘れてるってきっとー」 「そそ! なら俺たちと遊んだ方が有意義だって!」 そう喋りつづける彼らの視線は、美里の顔ではなくその下に向けられている。 美里にとってそれは見慣れた状態であり、より不快感を強くする。 (せめて女の子誘いたいなら、胸じゃなくて顔見てよ。もう、ホントに男の子って……) そろそろ大声出そうかな、と脳裏に浮かび始めた時だった。 「──おい」 一人の男子生徒の肩に、背後から別の人物の手が置かれる。 邪魔をされた男子生徒が「ああ!?」と低い声で威嚇しながら後ろを向くが、その勢いが急速に失われる。 何故なら彼に肩を置いた人物は、鬼のような形相をしたガタイの良い比較的長身の男だったからだ。 「ひいっ!?」 「その子は俺の知り合いなんだが、何の用だ? ああ?」 隆侍のドスを利かせた声に、男子生徒たちは一歩二歩と後ずさってしまう。 対して美里は、「隆侍さん!」と嬉しそうに彼を見つめる。 「ハ……ハハッ、知り合いが来たなら、俺たちは用済みだな! じゃ、じゃあこのへんで。さいなら~~~!!」 「お、俺もー!!」 結果、完全に戦意喪失した男子生徒たちはへっぴり腰のまま、ダッシュで逃げ出して路地の角へ消えた。 ナンパしていた男子生徒たちが消えたのを確認し終えた赤渕隆侍は、意識して寄せていた眉間を元に戻して一息吐いた。 「……きっと悪い噂が立つだろうな」 美里を手っ取り早く助け出す為とはいえ、もっと良い手段があれば良かったのにと隆侍はちょっとだけ後悔する。
/438ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加