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そんなことを考えていた隆侍に、美里が嬉々として近付く。
「隆侍さん! 助けてもらってありがとうございますっ!」
その屈託ない笑顔を見て、隆侍はこれを見れたなら仕方ないかと苦笑した。
「こっちの学園は、桜花と違ってあういう連中もいるから、一人で来ない方が良いよ」
「さすがにあそこまでしつこいとは思ってませんでした……」
美里はナンパに対し、それなりにハッキリと断りの言葉を返していたのだが、それだけでは追い払いきれないのがナンパというものだ。
もし相手が強行的に腕を引っ張ったりすれば、男女の体格差で美里は敵わなかっただろう。
「でも今日はお兄ちゃんに買い物を付き合ってもらう約束があるんです。隆侍さん、お兄ちゃんとは一緒じゃないんですか?」
「ん? 行栖が学園に残る用事があるってさっき連絡が……」
彼女の言葉を聞いた隆侍は先程のSNSでのメッセージを思い出す。
もしかしたら美里ちゃんの買い物に付き合うのが面倒だから、俺にああ連絡してきたのか、と隆侍は脳裏で考える。
「えー!? もうお兄ちゃん、それならちゃんと私に連絡してよお」
美里は今は現場にいない兄に対して文句を垂れる。
その後、何か思いついたのか、頬を赤くして隆侍の方を見始める。
「……あの、隆侍さん。今日、お暇ですか?」
それだけで隆侍は、ある程度美里の言いたいことを察する。
とはいえ美里に付き合うのは嫌ではないし、引っ越し業者も既に荷物をアパートに入れ終えて帰っているはずなので、急ぐ予定はない。
「買い物の荷物持ち代行だよね。良いよ」
「えへへ、ありがとうございます」
先回りして了承の台詞を口にすると、美里は小さくジャンプして喜びを表現してきた。
その際に揺れて存在を主張してくる大きな実りに、隆侍は視線を釣られてしまう。
(これじゃさっきの奴と大差ないじゃないか……駄目だ駄目だ)
かぶりを振って雑念を取り払おうとする隆侍。
しかし美里は以前として笑顔のままだった。
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