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………………。
美里の買い物に所要した時間は、二時間弱程度だった。
数軒の店を回った割には早いなと隆侍は感じた。
オマケに美里が購入し、隆侍が持っている荷物は両手こそ埋まったが、かなり余裕がある。
「こんなもんでいいの?」
買い物を一通り終わらせた二人は、沈み始めようとしている太陽を背に、夕希原の中でも賑やかな商店街を並んで歩いていた。
「はい。元々、お兄ちゃんに持たせる予定でしたから、そんなにいっぱい買うわけじゃなかったんですよ」
ニコニコ顔でそう答える美里を見て、隆侍は遠慮で購入量を控えたわけではないのだと分かり安心する。
上機嫌らしい彼女は隆侍の前に歩み出て、後ろ歩きで隆侍に視線を向ける。
「隆侍さんが付き合ってくださったので、私が荷物を持つ必要がなくなっちゃいました。ホントにありがとうございま──きゃっ!」
お礼を言い終えようとしたタイミングで、美里ちゃんが人とぶつかって小さく悲鳴を上げる。
警告は間に合わなかったが、ぶつかることが直前に分かっていた隆侍は、自分の方に倒れようとしている美里を、抱きかかえるようにして受け止めてあげた。
「おっと、悪い。大丈夫?」
美里とぶつかった相手は、隆侍と大体同じくらいの年に思われるパーカー姿の青年だった。
染められた茶色い髪をしている、隆侍と違い好印象を抱かれやすい顔立ちである。
「あ、はい。大丈夫です。すみません、前方不注意で……」
「いや、俺もちょっと注意不足だった。お互い様さ」
美里の謝罪に笑顔で答える青年。
すると彼は右手に持っていたあるものを美里に差し出してきた。
「それで、ぶつかった際に落ちかけていたこの『カード』は君ので良いのかな?」
それは隆侍も知っている水色のカード。
《ルナ・ブルーダイナソー》だった。
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