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(あのカードは……)
隆侍は青年の持つ《ルナ・ブルーダイナソー》を見て気付く。
あれは俺が美里ちゃんに渡したカードだ、と。
「あっ、はい! ありがとうございます、大切なカードなんです!」
落としていたことに気付いていなかった美里は、カードを差し出されたことに驚き、慌てて受け取る。
まだ大事に持ち続けてくれていたことに、隆侍は僅かに頬が緩む。
「《ルナ・ブルーダイナソー》か、随分と珍しいカードだ。君たちもデュエマやってるのかな?」
青年は美里が受け取ったカードを見つめながら、そう問いかけてくる。
すると美里はチラリと隆侍を顔を窺う。
隆侍は苦い表情になりながら、青年に答えた。
「いや、俺は3年前に辞めちゃったよ」
両親の死をきっかけに、デュエマへの関心が弱まってしまった隆侍。
自分のお気に入りである《ルナ・ブルーダイナソー》を美里に託し、残りのカードは遠方へ引っ越した後に全て手放してしまった。
故に今は、一枚もカードを持っていないのである。
隆侍の言葉を聞いた美里は、悲しそうな表情を浮かべる。
「……私は辞めたわけじゃないんですけど、桜花じゃデュエマをやっている人はいませんから、ネットでのみです今は」
「なるほど。桜花じゃいないのも仕方ないな」
青年は小さく頷いて納得の声を上げた。
ちなみに隆侍は、今はネットで対戦できる事実を知って少し驚いている。
「さて、これ以上二人のデートの邪魔をしちゃ悪いかな。俺は行くとしよう」
「デ、デート!!?」
顔を茹でダコのように真っ赤に染め上げて驚きの声を上げる美里。
わたわたと手を動かしながら、必死に弁解を言葉を連ねる。
「ちっ、違いますよ! ね、ねえ隆侍さん?」
「ああ。俺はこの子の兄に代わりの荷物持ち代行だから」
同意を求められ、隆侍は青年に向けて軽く説明をする。
それを聞いた青年は軽く笑った。
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