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驚きの現象はこれだけに留まらなかった。
象のような圧倒的な重量を持った生物が歩くような地響きが、近づいてくる。
そしてその正体はすぐに判明する。
何故なら、ビルによって隠れていた「それ」が遂に隆侍たちの視界に入ってきたからだ。
ゆうに5メートルは超えるであろう巨大な人型ロボット。
両肩にはショルダーアーマーのようなタイヤが付いており、両手もタイヤと同様の鈍い黒色である。
胸の中心にはコアのようなX字に光る球体が差し込まれている。
まるでバイクがトランスフォームして人型になったかのような、赤基調の巨大ロボットであった。
「なっ、何だあのバケモノは!!?」
中年サラリーマンが叫び、逃げ出そうと体を反転させる。
しかし足をもつれさせてしまい、膝をついてしまう。
赤色のバイクロボは大声の主であるサラリーマンに気付き、近付いていく。
隆侍の隣で美里が助けようと一瞬だけ反応するが、隆侍は無理だと瞬時に判断して彼女の手を掴んだ。
その内に巨大バイクロボはサラリーマンを右手で捕ま、それを顔の近くまで持って行く。
「う、うわああああ! や、やめてくれ!! 離してくれえ!!」
手からはみ出た両足を必死に動かして抵抗しようとするが、人間より圧倒的な力を持つであろう巨大バイクロボには無力だ。
そして次第にギリギリと、握られているコブシの力が強くなっていく。
「があああああああああ!!!」
体が押し潰されていく痛みに、バキバキと骨が折れていく音とともにサラリーマンが絶叫する。
しかし巨大バイクロボは容赦しない。
どんどんと握力は増していき、
「た……助け……っ!」
最後の懇願の台詞の途中で、グシャッと一際大きな音がサラリーマンから鳴り響いた。
それ以降、サラリーマンは力をなくし頭を下げてしまった。
巨大バイクロボのコブシからは、赤い液体が大量に零れ落ちていく。
一分にも満たない短い時間で、目の前の人間が殺された。
あまりにも理不尽に、屠られてしまった。
隆侍と美里は何の言葉も紡ぐことが出来ず、ただ立ち止まってしまっていた。
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