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その後、二人は諦めずに逃げ続けた。
青く染まった街の中を駆け巡り、何度もクロス模様の壁に脱出を阻まれた。
「クソ……ッ! やっぱり、俺たちは完全に隔離されてるのか……」
壁に拳を強く突き立てて、無念の叫びを上げる隆侍。
しかし壁は全ての勢いを相殺し、反射の痛みすら感じない。
「ま、待って……ください……。私、もう……走れません……」
壁で項垂れている隆侍の数歩後ろで、前傾姿勢で走る美里の姿があった。
既に体力を使い切り、限界ギリギリといった感じだ。
(美里ちゃんはもう走れそうにない、か……)
《轟く侵略レッドゾーン》から逃げる為だとはいえ、美里の体力を度外視して無理矢理連れ回してしまった自分を悔やむ。
しかし、運命は無情にも美里を休ませる気はないらしい。
再びドシンと地響きが聞こえてくる。
しかもかなり近い。
「美里ちゃんっ、早く隠れないと!」
隆侍は地響きが聞こえた方向からは死角となる建物を見つけ、美里の背中を押す。
そして一足先に建物の影に身を縮こませる。
美里もそれに続こうとしたのだが……。
「きゃっ!!」
疲労で足がもつれてしまったのか、そのままバランスを崩して地面に転げ倒れてしまう。
「美里ちゃん!」
隆侍が慌てて彼女の元へ駆け寄ろうとするが、
ズシンッと一際大きい音が響き渡る。
それはもう傍だった。
隆侍の視界にも、タイヤの付いた巨大な足が美里のすぐ隣にあるのが分かった。
「きゃああああああああ!!」
「美里ちゃんっ!!」
《轟く侵略レッドゾーン》はサラリーマンの時と同様に美里を片手で掴まえ、持ち上げる。
隆侍はただ名前を叫ぶことしか出来なかった。![image=498587098.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/498587098.jpg?width=800&format=jpg)
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