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………………。
気付けば、頭痛は完全に消えていた。
それによって隆侍は閉じていた目を開けて、周りを見る余裕が生まれた。
「……は?」
しかし、今の彼が立っている地は青く染まった街でも、元通りの夕希原でもなかった。
周りが石造りの観客席で囲まれている、いわゆる「闘技場」の中にいた。
(どういうことだ!? ここって、どう考えても日本じゃないよな……。ローマのコロッセオに転移した? いやいや、そんなことは……)
戸惑いながらも周りを見渡していた隆侍は、少し離れた位置でまるで闘技場での対戦相手のように向かい立っている存在に気が付いた。
「レッドゾーン……!」
そこに居たのは、サラリーマンの男を殺し、美里も同じ目に遭わそうとしていた怪物だった。
だがそこで隆侍は更に発見する。
(あいつの手に美里ちゃんがいない……!? しかも、俺たちが青い空間で遭遇した時よりも小さくなっているような……)
およそ半分程度の大きさ(無論それでも人間を軽く超えているが)に縮まったレッドゾーンの手には何も握られていない。
何故なんだ、と隆侍が疑問に思っていると、レッドゾーンが右手を前に出した。
するとそこに、一つのデュエル・マスターズのデッキが出現する。
独りでにシャッフルをしたデッキは、レッドゾーンが軽く手を動かすと十枚のカードが浮き上がり、その内の五枚がレッドゾーンの胸の辺りの空中で静止する。
更にどこからともなく銀色の板が、これまた浮遊してレッドゾーンの前に現れ、そこに残りの五枚のカードがシールドを並べるように伏せて置かれる。
そして、隆侍の前にも別の浮遊板が飛んできた。
(……フィールドを示すラインが描かれてる。どう見てもこれはデュエル・マスターズを行う為のボードだな……)
隆侍は、誰かにデュエマをしろと指示されているような気持ちになる。
しかし彼はデッキを持ち合わせていない。
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