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試合時間無制限で続けていたサッカーも、授業残り時間10分になったことで講師が片付けを命じたことで終了する。
「城川君、お疲れ様!」
「今日もすごかったよ!」
数名の女子生徒が慧の元へと集まってくる。
各々がタオルやペットボトルといった運動後の必需品を持っており、それを差し出してくる。
「ああ、ありがと。でも、自分で用意したのあるから、それは自分で使いな」
慧は朗らかな笑みを浮かべ、それらの受け取りをやんわりと断る。
その笑顔を見た女子たちは、元々ほんのり赤みが掛かっていた頬を更に赤く染める。
差し出しを拒否されたことはあまり気にしていないようだ。
彼女たちの反応には特にそれに気を留めず、慧はそのまま片付けをしている友人たちの元へと走って行った。
………………。
片付けが終わり、授業終了のチャイムが鳴って校庭から教室へと戻る最中、慧はサッカーをする際に脱いでいたジャージのポケットに入っていたスマートフォンを取り出す。
するとSNSアプリに、新規のメッセージが来ていたようだ。
そのアプリを開き、慧はメッセージを確認する。
(……陽毬か。『昼休み、生徒会室に来てください』っと)
確認を終えてスマートフォンをスリープ状態に戻した慧は、一緒に歩いていた友人たちに一言断った。
「ちょっと用あるから、昼飯は適当に食うわ」
「あーはいはい。オッケー分かった」
普段は友人たちと教室で一緒に昼ご飯を食べる慧だが、友人たちは彼が抜けることには特に気にしないようだ。
「まーた、女の子からのお誘いか。慧はモテるよなーホント。羨ましいぜ」
別の友人がちょっと嫌味を込めた台詞を口にする。
慧はそういうことではないと思いつつも、呼び出したのが女子生徒であることに違いはないので、苦笑せざるを得なかった。
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