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階段を上がり、通路に並んでいる幾つもの扉の内、五番目の扉の前で2人は立ち止まる。
扉の横にある表札にはまだ居住者のネームプレートは差し込まれていないが、部屋番号には『205』と書かれている。
隆侍は愛守から受け取っていた鍵をドアノブの鍵穴に挿入し、カチャリと鳴るまで捻った。
次にドアノブを回し、部屋の中へと入っていく。
「おー! 愛守さんの言う通り、綺麗じゃん」
黙って部屋内と観察する隆侍に代わって、行栖が後ろから身を乗り出して感想を口にする。
確かに外装と比べれば、室内は綺麗に整えられている。
今は家具家電が一切ないので、それがよく分かる。
一先ず、隆侍と行栖は靴を脱いでフローリングに上がる。
ひんやりとした冷たい感触が、靴下越しに伝わってくる。
リビングとなる広い部屋に荷物を置き、二人とも床に胡坐をかく。
「荷物届くのって明日なんだっけか? 夕飯はまだしも、寝るのはどうすんだ?」
部屋をキョロキョロと見回しながら行栖が疑問を投げかける。
隆侍と愛守は各自大きめのバッグを持ってはいるが、寝具を入れる余裕はない。
もしこの部屋で一晩過ごすなら、フローリングで直に寝ることになる。
しかし隆侍は大丈夫と答える。
「レンタルで布団を貸してくれるサービスがあってさ。今日はそこのを使うんだ。確か、2時間後くらいに来るはず」
「へぇ、そんなレンタルもあるんだな」
新事実を知り、納得の声を上げる行栖。
隆侍も調べるまで知らなかったことだ。
何故だか急に笑いが込み上げ、二人は共に軽く笑いあった。
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