1st duel─再会と思い出のカード

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その後、二人は他愛のない話を続けていた。 すると玄関のドアが開き、大家への挨拶を終えた愛守が入室してきた。 「あ、姉さん」 「うん、お邪魔しまー……じゃなかった」 今日から我が家だとはいえ、初入室である二人にとって「おかえり」と「ただいま」はまだ違和感が出てしまうようだ。 隆侍たちと同様に床に座って、ようやく脚を休められた愛守が深い溜め息を付く。 「ふー。あ、そうだ隆侍。せっかく行栖くんが来てくれたんだから一緒に遊びに出かけたらどう?」 「え?」 唐突に言われた提案に、隆侍は驚きの声のみを上げる。 愛守には、隆侍がそういう反応をされるのは想定通りだったらしく、そのまま言葉を続ける。 「布団の受け取りは私がいれば大丈夫だし。行栖くんをこのまま帰しちゃうのも悪いでしょ?」 「いやでも、姉さん一人家に残すってのは……」 自分と同様に長旅で疲れているであろう姉を一人だけ残して、遊びに出かけるのは少し忍びなく感じているようだ。 しかしそこで、隆侍の肩に行栖の手が置かれた。 「ま、いーじゃん! せっかくなんだし、久しぶりに一緒にゲームでもやろうぜ」 行栖にそう言われた隆侍は心が揺れ動いた。 姉を気遣える弟ではあるが、まだ友人と楽しく遊んでいたいお年頃でもあるのだ。 「気にする必要はないよー、隆侍。私はこの部屋でゆったりするだけだからさ」 最後に愛守にそう言われ、隆侍は自分を納得させた。 「分かったよ。じゃあ俺、行栖と出掛けてくる」 「いってらっしゃーい」 先行して玄関で靴を履いている行栖に着いて行く隆侍に向かい、愛守は右手をヒラヒラと振って見送ったのだった。
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