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アパートに入る前に行栖が言っていた通り、高並家は徒歩五分程度で見えてきた。
二階建てで、それなりの敷地はある一軒家。
路地からでも柵を越して見える小さな庭で、小さい頃に三人で走り回っていたことを隆侍は思い出す。
「ただいまー」
行栖は当然、手慣れた手つきで玄関扉の錠を回して、自宅の中へと入って行った。
玄関で後ろを向いて手招きをしてくれたので、隆侍も続いて高並家の扉をくぐる。
「お邪魔しま──」
「お兄ちゃん、やっと帰ってきたー! どこ行ってたのー!?」
隆侍の台詞は、廊下から繋がる部屋から聞こえてきた高い声によって上書きされてしまった。
そしてガラガラとその引き戸が開かれて、声の主の姿が見えてくる。
「おう、ちょっと隆侍の迎えにな」
「えっ!!?」
行栖の台詞を聞き、驚きの声を上げる女の子。
寝癖なのか所々跳ねている、肩より長い金色の髪、
部屋着と思われる少し大きめのTシャツと短パンを着ており、
幼い顔と体型には圧倒的に不釣り合いである、Tシャツを大きく盛り上げている二つのビッグスライム。
(え……美里ちゃん、だよな? 最後に会った二年前は、年相応程度だったのに……)
三つも年下で、行栖の実の妹である高並美里は兄と同様に隆侍とは仲が良かった。
しかし隆侍が遠方に引っ越した後、一度だけ二年前に会ったっきりで連絡も一切取っていなかった。
再会した親友の妹の著しい成長の証に、隆侍は驚きつつも目を離せないでいた。
そんな隆侍の視線に気付いたからか、美里は視線を下ろし……
「あ!!?」
顔を一気に耳たぶまで紅く染め上げ、再び大きな声を上げる。
そして自分の髪を服を押さえて隠して、首を大きく横に振ってきた。
「ち、違うんです! いつもはこんな恰好じゃないんです! きっ、着替えてきます~~っ!!」
叫びつつ一目散に階段の方へと走って行き二階へと上がって行ってしまった。
行栖は美里の反応に必死に笑いを押さえていたが、隆侍は女の子らしい反応に口元を緩ませていた。
「プクク……ッ、オレたちは先に居間でゲームしてようぜ」
「ああ、そだな」
行栖が靴を脱いで廊下に上がるのにならって、隆侍も靴を脱ぐのだった。
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