第1章

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 MRIという検査を準備している。死の尊厳やら、 人権に配慮するなら、幾分にも眉をしかめるだろう。 しかし我が医療研究施設では「新鮮な遺体」と呼ぶ。  実際問題、これは大事な事で遺体というのは、 損傷が激しかったり、薬品などで変化していたり。 そもそも腐敗が早いのである。  完全に欠損なく液体に浸されず、体内に貯まらず。 さらに防腐処理もされる前に、速やかに搬送する。 重大かつ基本的な事なのだから。「新鮮」なのだ。  防腐処理などを施せば、MRI詰り核磁気共鳴を、 現象利用して断層撮影を行う時に肉体組織に、 奇妙な明度が増減したり、根本的に写らない事も。  冥土ではなく、明度の話がでたが、細胞の死後に 水分再配分がなされて、撮影のコントラストに、 多大な影響がでる。  細胞はその生死の前後で、白と灰の明暗が、 僅かに曇るのだ。つまりボケるわけだ。 熟練の技師ならば、この程度の変化は見逃さない。  だが、まだ未熟な諸君達にはしっかり経験を 積んでほしい。技術にはヒラメキも蓄積も、他に 様々な事が組みあがって構築されている。  その最も美しい結晶の一つである遺体からは、 多くを学び、同時に糧になるだろう。故に敢えて 諸君にはゾンビであるように、遺体を扱ってほしい。  そう、情報を捕食するのだ。と、α教授は言った。 「生死の判断をMRIで行う特徴は何でしょうか?」 α博士の答えは明瞭だった。 「それはゴーストの有無である。」   霊魂というような意味だろうか?無論、違う。 ここは科学、医学の檻の中だ。正に実存など存在 しないと断言しながら、死の尊厳を大事にしつつ 遺体に群がる、我らゾンビ達である。論外だ。 「生体のままMRI撮影を行った場合、摶動流とか 肉体の微細な動きで、ブレた二重像となる。 この二重像をゴーストと呼んでいる。」  GHOST 「詰りは実際はMRI写真のスキャン中においては、 生体の振動、心臓の鼓動や血管を移動する血液が 撮影後にゴーストとなって写り込み、これは診断の 注意するべき点なのですね。」 「それらも諸君らがゾンビになれば、経験豊かな技。 加えて知識とヒラメキで、クリアできるし、それは 更なるデータとして生かされて行くわけだ。」  質問セクション。 「血管の目立ち難い手足等のMRI写真は、難しい そのように訊いた事がありますが。」
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