《霧・摩・影・變》シリーズ / 第二話 【陰摩】

2/310
前へ
/310ページ
次へ
〈・・・なお現場には多数の指紋が残されており警察は事件に深く関与していると思われる芦屋太郎26才の行方を追っています〉 「え?」 キッチンでコーヒーを入れていたりえは慌てて居間のテレビの前に走り寄った 〈モーニングトゥデイ朝のニュースを終わります、キャスターは渡辺玲子でしたそれでは良い一日をお過ごし下さい〉 「いま・・芦屋太郎って言ったわよね・・」 「まさかね・・・」 キッチンに戻りかけて足を止めた 寝室にパタパタと走りベッドの脇に置いてある充電器からスマホを取り、アドレス帳から芦屋太郎の番号を探し 通話のボタンを押した (ピュルルル・・ポヨン・・ピュルルル・・ポヨン・・) (へんな着信音・・・) すこし笑う 「出ないなぁ・・」 (近くにおられないか・・・・)しばらく着信が続き、アナウンサーのような声で出ないむねを告げられた 居間に戻り、リモコンでチャンネルを次々、替える 「ニュースやってないかな」 探したがどのチャンネルもニュースを終えたばかりだった 「あっそうだ」 押し入れから普段ほとんど使わないノートパソコンを引っ張りだした 電源を入れると少し間を置いてOSが立ち上がる 「だからパソコンて嫌いなのよね、テレビみたいに電源入れたらすぐにシャキっとつけっての」 ブツブツと文句を言いながら起動を待つ 隣の高野の無線LANにつながるようにしてもらったばかりだ 2回ほど有名な動画サイトを見ただけだが・・ 「えと・・これか・・・」 ブラウザを立ち上げて検索サイトのワード欄に《芦屋太郎》、事件と打ち込んで検索してみた モニタに表示された文字に目を見開いた 「えっ!マジ?・・・・」 慌ててスマホを手に取り電話を掛けた 「あっ!高野?今すぐ帰ってきて!!」      電話の向こうで高野が答える 〈ええ!!無茶言わないでよ・・いま会社に着いたところなんですよ〉 〈で、いきなり帰りますなんて言ったらそのまま、二度と来なくていいよって 言われちゃいますよ!〉 「あたしのこと愛してるなら今すぐ帰ってきてよ!」 〈そんな、無茶振り・・・とにかくかけ直すから!朝礼すぐ始まるから終わったらかけ直す〉 「早くよ!」 〈ハイハイ〉ため息まじりにこたえる高野    
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

147人が本棚に入れています
本棚に追加