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呼び出し音
通話状態になると同時にりえの声
〈もう!遅い!〉
「これでも急いんだんだから・・・で、どうしたんですか?」
〈あのね、さっきTVのニュースで芦屋くんの名前を言ったような気がしてネットで検索してみたんだけど・・芦屋くんが大変なことになってるみたいなの!〉 急き立てるように話すりえ
「芦屋さんが? 今は実家の酒屋さんでしょ まさか酒屋さんが倒産とか?」
〈違う、そういうんじゃない!ネットで検索して!すぐ、出てくるから!
新幹線乗り遅れちゃうから切るよ!またあとでかける!〉
「え!どこ行くの!」
〈芦屋くんとこに決まってるでしょ!先、行ってるからね!じゃ、またかける!〉
ツー・ツー・ツー・・・
通話は切れた、首を横に振る高野
「先に行ってるって・・・問答無用だな、まぁ行くけど・・・」
「けど何があったんだろう」
自分のデスクに戻り仕事してる振りしながら検索サイトに芦屋の名前と芦屋の地元の町の名を打ち込む
「ええ!」大きな声で驚きながら思わず立ち上がった
「高野、どうした?またなんかミスか」
課長の川村が手元の書類から顔を上げて怪訝そうに高野を見る
思わず出てしまった驚きの声にしまったという顔で課長の視線から逃げるように慌てて椅子に座り直す
「あ、あの・・いえ ア、アポの約束忘れてて!」
「ちょっと出ます!!」
背もたれにかけてあった上着を鷲づかみ書類バッグを片手に持って走りだす
「高野!おい!ちょっと待て! おい!高野!」
慌ててて聞こえない風を装ってドアから飛び出して行った
「ったく、あいつは」
デスクの上の電話に手をのばして受話器を取り上げプッシュボタンを押しかけて途中で手が止まった
かけるのをやめたのか受話器を戻した
「おい二之宮くん」
はい、と返事をしながら顔を上げる事務の二之宮 雪絵
黒ぶちのメガネをかけていて髪は三つ編みにしている
田舎の役場にいそうな雰囲気だが・・詳細はまた後ほど
ちょっと考える
「高野のやつ、あの様子じゃ今すぐは電話に出そうにもないな」
私はこれから本社で会議だから 少し時間をおいてからでいい、 高野に二時に私に電話するように言っておいてくれ」
「はい、わかりました伝えます」
「よろしく、じゃあ私も出かける」
「はい、行ってらっしゃいませ」
ニコリと笑い座ったまま軽くお辞儀をすると右手をあげ応えて課長の川村は事務所のドアを出ていった
引き出しから手帳を出してページをめくる雪絵
(高野君どこ行ったんだろ、アポなんてないはずだけどな・・・)
二之宮 雪絵は、高野のスケジュールを完璧に把握していた・・・
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