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タクシーは芦屋の実家「芦屋酒造」の前で止まった
白塗りの壁に、黒瓦、木の格子戸
入り口の横には、酒樽が3つ、積んである
見上げると木の看板に芦屋酒造と筆文字で書かれている
「いかにもな感じがいいわねー、時代が止まってるみたい」
格子戸を開けようとしたが開かない、紺色に白の染め抜きの「酒」と書いた暖簾が格子戸の内側に掛かっている
「お休みかな・・・」
行使の隙間から中をのぞき戸を叩いてみる
「すいませーん・・」
誰も出てこない、裏手は住居のはずだ入り口がないか建物沿いに歩いてみる
漆黒の木の塀沿いに歩いていくと引き戸があった
その横にインターホンがついている
押してみる
《ピンポーン》外まで聞こえるチャイム音
少しの間を置いてインターホンのスピーカから声がした
(どちら様ですか)
怪訝そうな男の声
「あの、あたし太郎君の友達で石井りえといいます」
(お待ち下さい・・)スピーカーの切れる音がした
引き戸の向こうからこちらに向かってくるパタパタという足音が聞こえた
ガラガラ 引き戸が開き和服に割烹着の女性がにこやかに出てきた
「あなたがりえさん! 太郎から聞いてますよ!」
「あらまぁ!噂通りのべっぴんさんね!」
「あらいけない!唐突にごめんなさいね!」
「初めまして私は太郎の母親です」
きちんとしたお辞儀をしながら言うとにこやかにりえを見る
「は、はじめまして」
芦屋の母の勢いにたじろぎながら応えるりえ
「ささどうぞ、入って頂戴!」引き戸に入りながら手招きをする
「はい」 軽くお辞儀をしながら引き戸をくぐるりえ
りえが木戸をくぐると彼女はすぐに板のカンヌキを内側からかけた
「さ、こちらにどうぞ」
後をついていく
「太郎のことは、知ってみえるんですよね」
ちらりとりえの顔を見てから視線をおとす
「はい、ニュースで見ました。それで、飛んできたんです・・・」
彼女はため息を一つつくと母屋の玄関にりえを招き入れる
「あがってくださいな」
「はい、お邪魔します・・・」
出されたスリッパをはいて玄関を上がる
座敷に通された
応接ようでなく居間のようだった
大きな一枚板で出来たテーブル
10人で食事ができそうな大きさだった
「ちょっとかけてお待ち下さいね」
座布団を出されたので座る・・
「すぐ戻りますからどうぞ足崩してくださいな」
そういうと奥に消えて行った
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