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目の前に突然現れたそのひとを前に、わたしの心は時を遡っていく。
あぁ、あの時も、こんな風にさくらがまう頃だった。
初めて出会った時も、さようならの時も。
「桜井、先輩……?」
そう尋ねるわたしの声は、春の風に掻き消されてしまって。
けれど、声はちゃんと返ってきた。
「文乃」
やっぱりわたしは、この声を知っている。
「久しぶりだな。六年……くらい」
あの頃よりもずっと大人らしくなったその面持ちに、涙さえこぼれそうになる。
「そういえば、わたし、このひとにフラれちゃったんだっけーーーー」
一人言のはずだったのに。
桜井先輩が哀しそうに笑った気がした。
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