そのよん

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いつものこの時間。いつものこの場所。 いつものホットミルク。いつものクロワッサン。 いつものを続けるからこそ芽生える親近感。 いつものを続けるからこそ生まれる距離感。 僕は今日もあの人を待っています。 僕のこの平凡な日常に変化を与えてくれた、あの人のことを待っています。 「あれ?今日まだ宮下さん来ないのね。お仕事長引いているのかな。」 そう言って黒澤さんが俺の目の前に座りました。そして新作のクロワッサンをもう一つ俺のお皿にぽんと置いてくれました。 僕と彼との関係を密かに知っている黒澤さんは、彼が来るのが遅い事をたまに知っているようで、それは彼の働く会社の社長がうちの店長と仲良しで、そして黒澤さんとも仲良しだからで。しかも、店長には内緒にしてくれているみたいで、黒澤さんは何かにつけて僕達の事を気にしてくれています。その優しさが、僕は特に嬉しくて、クロワッサンを食べる度に、その優しさに触れるのが楽しみの一つにもなっていました。 「今日は遅いみたいです。さっきメールが…」 「どんなメール?彼ってメールするんだね、あんまりマメそうに見えな…あ、言い過ぎたかな、はは。」 「いや、メールって言っても、一文字だけしか来ないんです。」 「どういう事?」 「一文字だけ来るんです。メールが来ない時は大抵遅れない時なんです。」 「へえ。どんなメールか気になっちゃうね。」 「多分見せても大丈夫だと思います。」 「いやいや、何だか催促したみたいだね。悪いよそんな。」 「いえ、本当に大丈夫だと思います。これです。」 「“遅”?これだけ?」 「はい。」 「これで、今日は遅れると、これだけ?もっと送れそうな気がするけどね…」 「でもいいんです。僕にメールを送る為に送信ボタンを押してくれてると思ったら、それだけでいいんです。」 「幸せだね。」 「え?」 「いや、何かその言葉が今の君に合ってる気がしたからさ、ついね。」 僕と彼がこういう関係になったのはつい先日の事です。あの日、あのエレベーターの中で、コーヒーをかけてしまったのかと思ったら間違いで、でも彼は別の要求を僕に持ちかけて、それから数日間、僕は毎日のように彼の会社にコーヒーとクロワッサンを届け、帰りには何かに理由をつけて二人で抜け出すように流れを作られた。あの日もそう、こんな感じでした。
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