LOT.3 九条亜沙美

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 翌朝、私はチャイムの音で目を覚ました。  睫毛の向こうに、窓から差し込む朝の光が見える。  気だるい身体をベッドから降ろすと、ガウンを羽織って部屋のドアを開けた。  そこにはホテルの制服を着た二十歳くらいの男の子が立っていて、彼は元気な声で朝の挨拶を告げてから丁寧に頭を下げた。 「ご朝食をお持ちいたしました」 「私は、頼んでないけど……」 「お連れ様から、このお時間にお持ちするようにと」  部屋の時計に目をやると、針はちょうど9時を指していた。  ルームサービス係の男の子は、二台のワゴンを部屋の中へ運んだ。  ワゴンの上には、何種類ものパンやフルーツ、サラダや焼かれたばかりのソーセージ、そして卵料理などが並んでいる。  それはとても一人で食べきれる量じゃなくて、私は呆気にとられてしまう。  男の子が部屋を去ると、私はクロワッサンを一口だけ食べてコーヒーをカップへ注いだ。 「こういうことには、気が利くのね」  小さく笑いながら呟いて、カップを持ったまま窓際まで歩き外を見下ろした。  そして、灰色一色のオフィス街をぼんやりと眺めながら、熱いコーヒーを口に運んだ。
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