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翌朝、私はチャイムの音で目を覚ました。
睫毛の向こうに、窓から差し込む朝の光が見える。
気だるい身体をベッドから降ろすと、ガウンを羽織って部屋のドアを開けた。
そこにはホテルの制服を着た二十歳くらいの男の子が立っていて、彼は元気な声で朝の挨拶を告げてから丁寧に頭を下げた。
「ご朝食をお持ちいたしました」
「私は、頼んでないけど……」
「お連れ様から、このお時間にお持ちするようにと」
部屋の時計に目をやると、針はちょうど9時を指していた。
ルームサービス係の男の子は、二台のワゴンを部屋の中へ運んだ。
ワゴンの上には、何種類ものパンやフルーツ、サラダや焼かれたばかりのソーセージ、そして卵料理などが並んでいる。
それはとても一人で食べきれる量じゃなくて、私は呆気にとられてしまう。
男の子が部屋を去ると、私はクロワッサンを一口だけ食べてコーヒーをカップへ注いだ。
「こういうことには、気が利くのね」
小さく笑いながら呟いて、カップを持ったまま窓際まで歩き外を見下ろした。
そして、灰色一色のオフィス街をぼんやりと眺めながら、熱いコーヒーを口に運んだ。
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