LOT.3 九条亜沙美

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 ホテルを出ると、晴れわたる空が彼方まで青を連ねていた。  私は、エントランスの前で客待ちをしているタクシーに向けた足を、途中で止めた。  なんだか少し歩きたい気分になって、駅のほうへと歩き始めた。  気持ちのいい風が、髪をなびかせる。  頭上まで昇った太陽が眩しくて、バッグから取り出したサングラスをかけた。  たくさんの人たちが、それぞれの目的地へ向かって歩いている。  その人の波に紛れてしまえば、私の姿だけでなく、もしかしたら存在までも消してくれるのではないだろうかと思えた。  このまま消えてしまったら、どんなに楽だろう。  目的地もなく歩き続ける私は、そう思った。  あの日の記憶が蘇る。  私は、自ら消えようとした。  大切なものを失い、生きる意味をなくしてしまったあの日……
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