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交差点の赤信号で立ち止まったとき、近くから香水の匂いがした。
それは覚えのある、懐かしい香りだった。
周りを見回すと、すぐ近くに立っている若い女性に目が止まった。
あのとき金色だった髪の毛はダークブラウンに変わっていたけれど、彼女のその横顔を見間違えるはずがなかった。
「リサ!」
私は彼女に近寄って声をかけた。
一瞬、彼女は驚いた顔をしたけれど、私がサングラスを外すと笑顔になった。
「亜沙美じゃないの!久しぶりね」
懐かしい声が、そう言った。
髪の色だけじゃなくて、ナチュラルな薄いメイクも清楚な服装もあの頃の彼女とはまるで違っていたけれど、その魅力的な笑顔だけは同じだった。
彼女……、黒江リサは、少し前まで私と同じオークションに出ていた女性だった。
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