87人が本棚に入れています
本棚に追加
「明日、キミも一緒に来ないか?」
急に彼がそんな言葉を口にして、私は驚く。
それが本気なのか冗談なのか、まだ彼をよく知らない私には分からない。
でもどちらにせよ、ひとつの答えしか持ちあわせていない私は、薄い笑顔で首を振った。
「どうして?旅費のことなら俺に任せておけばいい」
その真剣な目を見て、私は彼が本気だったことを知る。
何て答えようか考えながら長い髪をかきあげてみたけれど、気のきいた答えは見つからなかった。
「そうじゃないわ……、無理なの」
「なぜ?」
彼は、その答えに納得していなかった。
彼のネクタイの結び目に作られたディンプル(窪み)に指を這わせながら、私は静かな声で言った。
「だって……、私はあなたの、一夜かぎりの恋人だから」
最初のコメントを投稿しよう!