LOT.3 九条亜沙美

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「明日、キミも一緒に来ないか?」  急に彼がそんな言葉を口にして、私は驚く。  それが本気なのか冗談なのか、まだ彼をよく知らない私には分からない。  でもどちらにせよ、ひとつの答えしか持ちあわせていない私は、薄い笑顔で首を振った。 「どうして?旅費のことなら俺に任せておけばいい」  その真剣な目を見て、私は彼が本気だったことを知る。  何て答えようか考えながら長い髪をかきあげてみたけれど、気のきいた答えは見つからなかった。 「そうじゃないわ……、無理なの」 「なぜ?」  彼は、その答えに納得していなかった。  彼のネクタイの結び目に作られたディンプル(窪み)に指を這わせながら、私は静かな声で言った。 「だって……、私はあなたの、一夜かぎりの恋人だから」
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