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私の名前は水川綾香。この春から青葉学院高校の一年生になる。
(母)綾香、早くしないと遅刻するわよ。
(綾香)分かってる。
私は中学時代は特に運動にも学力にも秀でたわけでもなく何事もなく普通の学生生活を送っていた。
(綾香)行ってきまーす。
私の行く青葉学院は神奈川では有名な私立である。学力もわりかし高く運動部も強豪と呼ばれる部が多い。校風がにぎやかなところも売りにしている。そんなところになぜ私みたいな普通の人間が来たのだろうと自分でも思う。
学校に行く途中のことだった。私は細い路地を出たところで自転車に衝突しそうになった。
(綾香)きゃっ
私はギリギリのところで自転車を回避した。すると自転車は勢いよく倒れた。
自転車に乗っていたのは青葉の制服にエナメルバックをしょった男の子だった。
(男子)急に飛び出すな、危ねえだろ。
(綾香)アンタがスピード出しすぎなのよ。
私はその場を早く去りたく立ち上がろうとした。しかし、その瞬間、足首に猛烈な痛みが走った。
(綾香)イタ!
転んだ時に右足首を変に捻ってしまったのだ。
男子は自転車を起こすと私の異変に気づき近寄った。
(男子)どっか痛めたのか?
(綾香)平気よ。
私は無理にでも立とうとしたが痛みが強すぎて立ち上がれない。
(綾香)これじゃ遅刻だ。
(男子)たく、世話の焼ける女だぜ。
男は手を差し出して言った。
(男子)捕まって痛めてねえ方の足で立ち上がれ。
私は彼の手を掴み左足と彼の腕力で立ち上がった。そして彼は言った。
(男子)この足じゃ歩けねえだろ。学校まで俺が連れて行ってやるよ。
(綾香)いいわよ。自分で行くから。
(男子)その足じゃ遅刻するのがオチだぞ。いいから俺のチャリで連れてってやる。
彼の言う通りだった。私は渋々彼の自転車の後ろに座った。
(男子)しっかり捕まってろよ。
(綾香)うん
彼は全力でペダルをこぎ、猛スピードで走ってくれた。おかげで学校に遅刻せずに済んだ。
(綾香)ありがとう。ここで十分だから
私は自転車を降りて行こうとしたが、足を着いた瞬間に再び痛みが走りその場にしゃがみこんだ。
(男子)こりゃあ重症だな。
彼は私を背負った。
(綾香)ちょっとどういうつもり?
(男子)保健室まで連れてく。たぶんお前のその足捻挫だから
(綾香)恥ずかしいから下ろしてよ。
(男子)その足じゃ歩けねえだろ。
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