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「これからどこに行くの?」
「行先はないよ。本能に任せるんだ」
「カッコイイねぇ」
「ぼくにとっては自然なことだよ」
そう言って君は3匹目のニジマスを釣り上げた。私は水面からつま先を引き上げ、スニーカーを履き直すと膝を抱えて座り直した。
「君が孤独が好きなのは解った。奇遇なことに私も次の行先を考えあぐねていた所だったんだ。君がよかったら、私を旅のお供にしてくれない?1日だけでいいから、君の孤独の楽しみ方を私に伝授してよ」
小さな君は私をじっと見つめて何やら考え込んでいたようだったけれど、最後は「いいよ」と頷いてくれた。
こうして君と私の小さな旅は始まったんだ____
私には、君と違って帰らなきゃいけない場所があるし、自由な時間も決まってる。
またここに帰って来るのだからと、必要最低限のものだけをリュックに詰め込んで、部屋の鍵を閉めた。
君が釣りをしていた桟橋に再び戻ると、君はさっきの猫と一緒に日向ぼっこをしていた。
古ぼけたブリキのバケツも釣ったはずのニジマスも見当たらなかった。
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