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「君の魚はどうしたの?」
そう訊ねたら、「ソーセージにかえて貰ったんだよ」と胸を張って答えた。
「準備は出来たのかい?」
「いつでも出発OKだよ」
背負ったリュックを君に見せ、私はその場で軽く足踏みをした。君は猫の頭を撫でながら、別れを告げると、リュックを背負い、歩き出した。
私は君の後を追いかける。
湖畔沿いの道を暫く歩いていくと、ピンク色の蝶が舞っているような花をつけた背の高い植物の群生が目の前に広がっていた。
「何ていう花なの?」
「ヤナギランだよ。今の時期だとそこら中に咲いてるよ」
君はヤナギランを掻き分け前に進む。身長より背の高いヤナギランを掻き分けるのは一苦労だったけれど、私も君を倣って突き進んだ。
ヤナギランの群生を出ると、目の前には針葉樹の森が広がっていた。
初夏の心地よい陽気でも、ヤナギランとの格闘の後はじっとりと背中に汗を掻いていた。
けれど、一歩森へ足を踏み入れると、そこはひんやりとしていて、汗がすぅと消えていくのが解った。
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