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空は焼けて赤くもなければ大地は焦げて黒くもない
命を奪う無機質な重みも頬を掠める熱もない
「…………」
何よりベランダで小鳥がさえずる朝を迎えるという時点で奇跡にも近い何かを感じるのだから
長年の体に染み付いた習慣とは中々、抜けるものではない
ましてや命に関わるとなれば尚更だ
時差ボケは無いにしろ、その習慣のせいで自身の朝は早いものであった
元来、仕事ばかりしていて日常というモノと離れていたからか趣味娯楽というものを持ち合わせていない
精々、銃やナイフの手入れぐらいだ
朝の人気が無く、閑散とした清々しい道を歩く
朝露が朝日に輝いて葉が瑞々しい
そよぐ風が心地よい季節であった
そんな朝はのんびり食事をしながらテレビを観る者もいれば、まだ寝ている者もいるだろう
貴重な休日を体力回復に努め、英気を養いまた繰り返される日々を万全として迎える為にも
或いは日頃出来ない事をする
休日とは様々な使い道があるのだ
「隊長じゃないですか!おはようございます」
恐らく朝からトレーニングをする人間は、きっと少数派だろう
自分はそう思う
「Good Morning、ユイナ……休日なのにトレーニングか」
「はい、休日だからこそ普段出来ない自分の鍛錬をしようと思って」
威勢のいい挨拶をした青年、古凪 唯梛(こなぎ ゆいな)に少し皮肉を込めて言ったつもりだが通じてないようだ
サングラスが無かったら呆れた顔が丸分かりだったかもしれない
「……ユイナ」
「はい?」
「俺は煙草を吸いたいんだが?」
「煙草は体に悪いですよ」
「…………」
吸おうと出した煙草を掴み妨害してくる目の前の部下に目を細める
警察官であり烏隊副隊長でもある彼は中々の正義感溢れる好青年だが、些か真面目過ぎるのだ
今もこうして妨害してくるのだから
「仕方ない人質救出作戦でもするか」
「……負けません!」
「Well really!(やれやれ、困ったもんだな!)」
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