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先に踏み出したのは自分だった
顔を狙って拳を突き出す、しかし拳は当たることは無くかわされ、お返しとばかりにがら空きの脇腹を狙われる
横に避けて勢いを殺しつつ足を掴む
僅かに脇腹へ衝撃があったが問題は無い
足を掴まれたユイナは一瞬だけ焦った顔をしたが直ぐに冷静さを取り戻していた
立て直される前に決めようと足を持つ手に力を入れた瞬間、
「まだまだぁッ!!」
身体を捻り足を振り払われる
(これは……)
だからかは分からないが無意識に身体が動いてしまったのだ
殺られる前に殺れ、と
「ッ!?」
息を呑む気配がしたのと、しまった、と思ったのは同時だった
「いっだああぁぁあああ?!!!」
つい、うっかり殺る気でいってしまい朝の公園に大変痛そうな音と悲痛な叫び声が響いた
観戦していたのだろうか烏が驚いて羽ばたいた
「隊長……」
「なんだ」
「痛いです……」
「そうか」
「あと重いです……!」
「まぁ待て一服させろ」
あの後、うっかり殺る気スイッチが入ってしまいユイナをぶっ飛ばしてしまい手合わせは終了した
もちろん人質(タバコ)は無事に救出し現在、地に伏したユイナの上に座り一服している
やはり一汗かいた後の一服は格別だった
「今回はいけると思ったんですけど……」
「まぁ、惜しかったな」
「あと最後なんか殺しに来てませんでしたか?」
「うっかりというやつだ」
深く吸い込み、ゆっくりと吐き出す
煙は青い空へ混ざり合うようにして消えていく
「守る為の戦いと奪う為の戦いだからな……一歩の差だな」
「一歩ですか」
「あぁ、一歩だ」
「……なんか大きな一歩ですね」
「何事も最初の一歩が難しいだろ」
「まぁ……」
そうですけど、というユイナの顔は如何にも不服とばかりに膨れっ面だった
「ユイナ」
「なんですか?あと、どいて下さい」
「本当に二十歳超えてるのか?」
「ほっといて下さい!!!!」
ムキになって怒る辺りも子供らしいと言えば彼は更に怒るだろうか
しかし、何故かからかいたくなってしまうのだから仕方ない
「ユイナ、メシ奢れ」
「隊長の方がお金持ちでしょ?!!」
「奢られると更に美味しい」
「いつか絶対に勝ちますからね!!」
おわり
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