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「どうして病院に?」
「兄貴がここの医者でさ。
忘れ物届けに来いって言われたから
しかたなく。」
肩を竦めて呆れ顔を見せる時雨に
クスリと琴葉が笑う
「お兄さんがいるんだ。
しかも医者…すごいね。」
「頭はいいけど口は悪いぜ?」
「それでもいいじゃない。」
「琴葉はいないの?」
「いない。」
「そっか。で、ここに来た理由は?」
「先生に相談しに来たの。
いつもだけどね。」
「なんの相談?」
「これ。」
琴葉が指し示したのは
自分の左目だった
「そういえば、さっきから
気になってたけどそれどうした?」
「…事故にあってね。
こっちだけ見えないの。」
琴葉は少し悲しそうに呟いた
琴葉の左目は眼帯で覆われている
事故により左目に光が戻る事は
二度となくなってしまったのだ
「そっか。悪い、なんか。」
「いいの。右目は見えてるんだし。
もう慣れてるから。」
「強いね。」
「諦めだよ。」
自嘲するかのような笑みを漏らし
琴葉は立ち上がった
「さてと、私そろそろ帰るね。」
「俺も帰ろっかな。
下まで一緒に行こーぜ。」
「うん。」
時雨も立ち上がり
琴葉の横に並び歩き出す
「あ…。」
すると時雨が突然立ち止まる
「どうしたの?」
「兄貴のとこにケータイ忘れた…。」
琴葉が溜息をついたのは言うまでもない
…
あれから
屋上から出て診察室などがある
通路を歩いていく
「ケータイ忘れるなんて
中々ないと思ったけど…。」
「はは…。俺も中々しないんだけどね。
そういや琴葉、この後何かないのか?」
「用事?ないよ。
暇つぶしについていってあげる。」
「くくっ。ありがとさん。」
無表情ながら暇つぶしと評した琴葉に
お礼を述べつつ
二人は時雨の兄を探していた
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