第一章・ーおちてるー

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 それよりちょっと肌寒いから、家の中に戻ろう。肩を震わせ踵を返し、縁側まで戻ったところでナニか落ちる音がした。  ……?  今、井戸に……ナニか落ちた……?  戻ってもう一度覗き込んで見ると、目を凝らさなくても分かるものが在る。  ……あれ? ナニか在る。あれは、何だ? えーっと……。  ……白いな。何か見た事あるような。  あ、分かった! あれ、骸骨だ! 骸骨が幾つも折り重なって、白い骨を見せているんだ。  あれ? おかしいな。何であれが、井戸の底に在るんだ? あれ、誰だ。  何か思い出してきた。  あれ、ここの人達だ。ここに住んでいた人達だよ。  何だよ。道理で誰も帰ってこない筈だ。皆ここにいたら、そりゃ帰ってこられないわな。  そうだよ。全部、ちゃんと思い出した。  俺も大概うっかりだな。こんな大事な、忘れちゃいけない事をすっかり忘れていたなんて。  ああ、すっきりした。  井戸を覗き込んだ体勢のまま、おかしくて小さく笑う。
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