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やってしまった、と思う。
遠慮もせずにシャワー室を勝手に借りて、ざぁと流れるシャワーを浴びながら俺は後悔に悩まされていた。
酒の勢い、という名目で忘れたふりをできるものだろうか。いいや、出来そうにもない。
ばたりとシャワー室から出れば、いい匂いが漂ってくる。なんだ、一馬何か作ってんのか。
髪の毛を乾かしていると一馬がひょっこり現れた。
「……瑛介、おはよ」
「お、はよ……悪ぃ、シャワー借りた……」
「あぁ、いいよ。飯出来たから」
「あ、あり、ありがと」
変になった。声も上擦った。恥ずかしい。
一馬が戻っていったのを確認してはぁとため息を吐いた。いいや、俺を抱くだなんて一馬も酔っていたはずだ、それこそ相手が忘れてるかもしれない。
そんな期待をしながら俺はドライヤーの電源を切って部屋へと向かった。
そこには美味しそうな和食が並んでいた。
「朝からこんな豪華な……」
「客がいる時くらいはな」
よいせ、と一馬が座って手を合わせた。それに倣って俺も手を合わせて「いただきます」と口にする。
焼きたてらしい秋刀魚を箸でほぐして口に運ぶ。丁度いい塩加減だ。
「んん、美味い。お前調理実習でも実力発揮してたもんなぁ」
「調理実習て。あんなん皆同じものできるでしょ」
「お前作ったハンバーグまじ美味かったの!」
俺の力説に、ふは、と一馬が笑った。いいね、俺お前の笑顔好きだよ。
「じゃあ今日はハンバーグ作ろうかな。明日の応援も兼ねて」
「まじで!? ラッキー!」
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