166人が本棚に入れています
本棚に追加
やった、ハンバーグだ。一馬のハンバーグ。
一馬は真面目な顔をして俺を見る。
「それで、昨日のことなんだけど……覚えてる?」
「おおおお、おぼ、おぼ、覚えて、ないっ」
忘れてくれていなかったのか。
嘘にもほどがあるしバレバレだ。やっぱりバレていたようで一馬は目を逸らしてしまった。あぁ、やっぱ後悔してるの。
「ごめん、酒入ってて調子乗った」
「んん、いや、うん。俺こそ、ごめん……」
「……瑛介がさ、ちゅーしてきたから、その、抑えがきかなくなって」
……ん?
俺がキスしたから、一馬は俺のことを抱いたっていうの?
「俺のこと嫌いになったかもしんないけど……あの、俺、まだ友達で、いたい、し……ほんとごめん」
待って、待ってよ。
一馬は酒の勢いでもあったけれど……お前自身の意思で俺を抱いてくれたの?
「……嫌いになんかならないよ」
「……ホント?」
テーブル越しに、キスをする。
一馬の驚いた顔が面白くて、思わず笑った。
「なん、で」
「俺、今は酔ってないよ?」
「えーすけ、」
「気持ち悪いかもしんないけど、俺、ずっと一馬のこと好きだった。高校の時からずっと」
ずっと好きでさ。嫌われんの怖いから、言えなかっただけなんだ。
そんな思いが伝わればいいなぁなんて、思うんだけど。
「今回上京しようとしてんのも、お前がいるから……馬鹿だよな」
「うん……馬鹿だ」
馬鹿だ、って。認められてしまった。
一馬の方を見ると、それはそれは嬉しそうに頬を緩めて笑っている。
「俺のため?」
「……うん」
「すごく嬉しい、んだけど」
一馬がわざわざ俺の隣に移動してすとんと腰を下ろした。
頭を肩に乗せてきて、擦り寄ってくる。汗の臭いがしてきて、昨晩のことを思い出してしまい顔が赤くなりそうだ。
「俺さぁ、上京した時すっごく足りなくて空っぽになってたの。それでさ、実家に帰った時に瑛介に会って満たされてわかった」
視線が俺の方に向いているのかもしれない。だけど肩に乗っている彼の顔はよく見えなかった。
「俺、瑛介の事好きなんだって」
一馬が肩から頭を離して俺にキスをしてきた。触れるだけの、長いキス。
絶対受かって、上京してきてねだなんて一馬は俺に笑いかけてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!