166人が本棚に入れています
本棚に追加
俺、御神楽瑛介が学生の頃から好きだったのは男だった。自分はゲイやらホモやらではなくて、好きになった人間がたまたま男であったのだと、ありきたりで下らない言い訳を並べて何年も生活し続けている。
仮に想いが相手に届いたとしても繁殖能力もなく子孫も残せないような虚しい関係になってしまう。
親に結婚はまだかとせがまれる度に申し訳ない気持ちになるのだ。まだ若くて、結婚結婚と言われるのは逆に早い気がするのだが。
友人としては好きな分類に分けてくれているのか、片想い相手の彼は就職と言って上京してしまった後もちょくちょくと連絡をくれるのだ。嬉しくて嬉しくて仕方がない。
今日も何気ない会話を機械越しにしていたのだ。
「いいなぁ。俺もそっちに行きたい……」
ぽつりと自分の口から本音が漏れる。はっと口元を隠してみたが携帯電話で会話をしているわけで、相手にその行動は通じるはずもなかった。
「お前、就職上京すんだっけ?」
「え、あぁ……その予定。でもなかなか良い会社がないんだよなぁ」
「そっかぁ。お前田舎大好きじゃん、都会に出て来れんのかぁ?」
「んだとこの都会かぶれが」
俺の言葉に電話越しの想い相手、結城一馬は豪快に笑う。いいな、久々にお前の笑い声聞いたわ。
「お前は地元で就職すんのかと思ってた」
そりゃあ、俺も地元愛ですし、就職もそうするつもりだったさ。
でも、お前が、お前がこっちにいないから。都会に出る理由がお前を追いかけるだなんて、言ったらお前はどう思うんだろうな、やっぱり引くのかな。引くんだろうな。
「やっぱ色んな世界を見たいじゃん」
「おぉ? 瑛介ちゃん、かっこいいこと言いますねぇ」
「うるせぇ!!」
最初のコメントを投稿しよう!