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 電話越しで一馬の馬鹿にした声が聞こえてくる。近くにいたら小突くのに。 「就活頑張れよ」 「おう。とりあえず一社は近い内に面接行くんだ。見てろよ、一発合格だ」 「え、こっち来るってこと?」 「おう」 「ならうちに泊まれば?」 「えっ」  一馬の爆弾発言に間の抜けた声が自分の口からぽろりと出た。  一馬は当たり前のように、言葉をつらつらと続けていく。 「ホテルだと金勿体無いでしょ。あー、遠かったらあれだけど、近いならうち泊まりな? あの、狭いけど」 「あ、ありがとう」  お礼の言葉を述べる。それは無意識に肯定してしまったことの証だった。  友人に断られなかったことが嬉しかったのか、一馬は先程よりも嬉しそうな声色で「いつ来んの?」「どこの会社なの?」と質問をいくつもこちらに投げかけてきた。俺はそれに慌てるように返事を返していく。 「じゃあ、飛行機取れたら連絡くれよ。迎えに行くからさ」  そう言った一馬の声で今日の通話は終わった。  ぼふり。椅子のように利用していたベッドに倒れ込んでみて、クリーム色の天井を眺める。小さい頃からお世話になったこの部屋ともさっさとおさらばだ。 「……一馬、」  ぽつりと相手の名前を呟いてみる。誰もいないその部屋では返事なんて返ってくるはずもなく、寂しく自分の声が耳へと返ってくる。  通話したことを思い返して、じんわりと体が熱くなる。通話しただけでこんなだなんて、どれだけあいつの事が好きなのだろう。お泊りなんかして大丈夫なのだろうか、理性が。  自分の履いていたパンツに手を入れて、自身の陰茎に触れてみる。手が思ったより冷たくて、びくりと自分で体を揺らす。 「……ん、ん」  冷たいことにも構わず、俺は自分の右手で自身を包み込んで強めに上下に擦った。先程までの一馬を思い出して。  ……一馬を、抱く想像なんかしちゃって。 「一馬……一馬ッ……」  息を次第に荒らげながら、擦る力を強めていく。罪悪感と快感がせめぎ合って、より快感へと変わっていく気がした。  こんなことしてるなんてバレたら、俺、一馬に軽蔑されるのかな。
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