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「その本、私も読んだよ!」
ふと気づくと、目の前には黒髪ショートの小柄で可憐な少女が私を見つめていた。窓の隙間から吹き込んだそよ風が、彼女の髪を揺らす。
私は慣れた手つきで本をパタンと閉じ、不敵な笑みを浮かべる。そうして、上目遣いで私を見上げる可憐な少女に向かって言った。
「そうかい。この作家さんの本なら他にもいくつか持っているけど、貸そうか?」
少女は元気良く頷くと、両手を背中で組みながら私を笑顔でじっと見つめる。
私は少し大げさにため息をつき、「やれやれ」とわざとらしく言うと、カバンの中に本をそろりと滑らし、あえてそのまま目を合わさず、
「俺の家、割と学校から近いからさ、今日の放課後寄っていく?」
そう言った後にそっと顔を上げると、今度は先ほどよりもブンブンと首を縦に振る少女。
「楽しみにしてるね!じゃあ、また放課後!」
私はちょこちょこと走る愛くるしい後ろ姿を見つめながら、また「やれやれ」とわざとらしく呟いた。
「あの人、また一人でぶつぶつ喋ってるんだけど。」
はっと我に返ったときには、少し前で弁当を食べている女子グループの批難の目が私に向けられていた。彼女たちのひそひそ声は、廊下から大音量で聴こえてくる上田の弁解の声よりも耳に突き刺さる。
私はもちろん聞こえないふりをしながら、本の続きへと集中した。
「でさ、上田、なんて言って告白したんだよ?
いいから教えろって!」
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