プロローグ

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私の学校は学園都市という駅から5分、近隣にもたくさんの学校があり、向かっている図書館内は様々な制服で彩られている。 去年にオープンしたばかりのイオンの前を通り、私はまたも妄想に鼻をひくつかせながら歩いていたのだが、ふと目の前で、とある男子と女子が一緒に歩いているのに気付いた。 まぁカップルが歩いていることなどそれほどもの珍しいことではないのだが、その二人に見覚えがあったことで私は視線を止めた。なんと、今学校で話題沸騰中の二人、北川さんとうえっちである。 これは大スクープである。 あの体育館裏ですれ違った二人が、なんと目の前で一緒に歩いているのである。 しかも私は、すぐに衝撃的な場面を見ることとなった。 うえっちはちらっと横目で北川さんを見ると、少しうつむいてから、恥ずかしそうに北川さんの手を取った。途端、北川さんは耳を真っ赤にしてうつむき、しかしすぐに手を取られたことを受け入れた。 そして二人は、手をつないだまま路地に向かって行く。 体育館裏という前情報のせいか、二人がやけに初々しくも愛らしいカップルに見えてしまい、見ているだけでドキドキが止まらない。 入り組んだ路地を迷わず進む二人に、電柱や角で身を隠しつつ私はついつい後をつけていた。 すると、二人はある家の前で立ち止まった。 なんと、実はもう互いの家を行き来する仲だったわけか。 しかしうえっちのことだ、きっと家に連れ込んだところで、押し倒したりなどはできまい。 きっと、北川さんの横顔を眺め、かわいいなぁなどと考え、「ん、どうしたの?」「いやなんでもないよ」なんて恥ずかしい会話を繰り広げつつ、少し空気のよめないうえっちは「スマッシュブラザーズやる?」などと女子が全く喜びそうにもない提案をしてしまうのだが、北川さんはしどろもどろなうえっちに対してくすりと笑い、本当にかわいいやつだなぁ、などと考えながら「いいよ」と答え、少しの間無言で懸命にスマッシュブラザーズをやるのだ。 「なぁ、お前うちの学校の制服だよな? もしかして、俺らの後つけてきてたの?」 はっ、と気付いた時は、声をかけられた時であった。 すぐ目の前に、私よりも背が一回り小さいうえっちが立っていた。
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