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「おや?一体どうなさったんですか?」
くつくつと嗤う鬼が目の前に音も無く現れた。
頭の中が真っ白になった俺は
嗤う鬼の胸ぐらを掴み怒鳴る。
「何でこうなった!!お前の言う通りにしたぞ!!時間も、日にちも、何もかも言われた通りだ!!なのに何で!!どうして!!アイツもアイツの子供も返せよ!」
「貴方の御友人とそのご子息様……だけですか?」
きょとんとした顔で言葉を放ち、そしてまたニヤニヤと口を歪める鬼にまた怒りが抑えられなくなる。
「何をニヤニヤしてやがる!!ふざけんじゃねぇ!!早くこの状況をどうにかしやがれ!!」
「全て予定通りなんです。
汚れなき魂と、思いやりの満ちた魂、罪悪感で染まった魂の三つを手に入れる事が本日の予定でしたので。」
嗤う鬼は当たり前の事のように話す。
意味がわからない。当初の予定と全く噛み合わない。
「テメェが俺にした説明にそんな話なんざ無かったじゃねぇか!!!」
「えぇ。じゃないと協力して頂けなかったでしょう?簡単に言います。私、嘘をついておりました。人間とは不思議な生き物ですよね?非現実的だと思う出来事に遭遇すると、ついつい言われるがまま信じてしまう。思考停止している事に気付かない愚かな生き物ですよね?」
「一体テメェ……何を…言ってやがる…」
「鬼が、運命を変えるために、貴方の元に現れた。
選ばれたとか思いました?特別だとか思いました?あぁ、魂の管理自体は確かにしておりますのであながち全てが嘘という訳ではありません。」
しかし、と鬼は人差し指をピンと立てより一層嗤いながら告げる。
「魂を食したいという方に魂の横流しをするというバイトがありまして。その仕事をする上で、最適なのが貴方だったというだけです。運命を変えるとか、救うだとかそんな大それた事を貴方に出来るはずないでしょう?」
「つまりテメェの利益の為にアイツらを殺したいけど、直接触れる事が出来ねぇから俺を使ったって事か!!ふざけやがって!!」
俺は拳を握り締めて鬼の顔を殴り抜こうとする…が鬼はその拳を受け止める。
「仮にも鬼である私が人間如きに力負けする訳がありません。
それに貴方、さっきから気付いてらっしゃいませんよね?」
「くっ……!!気付いてないって何の事だ!」
鬼はぐにゃりと嗤いながら心底楽しそうに告げる。
「貴方……もう死んでますよ?」
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