怠惰―惰性と堕性―

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視界に広がる世界は、とても鈍く見える。 光り輝くとか、希望だとか、夢だとか。 そんなものは俺には無くて、ただ毎日をどう生きるかでパンクしそうなんだ。 昔はこうじゃなかったんだけどな。 今はもう、会話も、仕事も、生きることさえ面倒くさい。かといって死ぬわけにもいかず、ただ毎日の退屈に押し潰されそうになりながら生きている。 昔からの友人の反応は様々なモノだった。 働かなきゃゴミなんだと罵る奴、考え方を変えようと説得してくる奴、俺の現状を知ると何も言わず離れていく奴、けど、どれも俺には届かなくて。そんなことどうでもいいし面倒くさい。 住む世界が変わったんだ。おかしいのはお前らの方だよ。こんな面倒な世界で生き生き出来る奴らには俺のことなんて分かる筈がない。 全ての思考にマイナスがこびりつく。 きっと心が壊れたのだろう。 けど、それを治す気力も湧かない。 「あー、面倒くさい。」 独り言を呟きながら起きて、カップ麺を作る。 こんな時でも腹は減る。食わなきゃ死ねるとかそんなことは思わない。 苦しいから死にたいとは思っても死ぬ為に苦しむなんてまっぴらだ。 死にたいってより、消えたい。 このまま無価値に静かに何の苦痛もなくただただただただ溶けるように消えて無くなりたい。 そんなことを考えてる間にカップ麺は出来上がり、TVを付けて食事を開始する。 季節は秋。ハロウィンだなんだとはしゃぐ人々を見て、元気だなぁと思う。 きっと、TVの街頭インタビューではしゃぐ彼らには、やりがいも、夢も希望もあって、光り輝く明日があるのだろう。 羨望でも嫉妬でもなく、心の底から湧いた感情は、気持ち悪いという悪寒だった。 こんな世界ではしゃぐ彼らは、もはや俺から見たら怪物だ。そしてその怪物達は、俺のような人間を見て、甘えだとか逃げだとか腐ってるとか言うのだろう。 価値なんて無く、生き甲斐も無く、この世に何も為さない俺は間違っているのだろう。例え間違っているとしても、俺はこうなったのだし、もう明るい所に戻りたいと思わない。 あぁ、面倒くさい。
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