怠惰―惰性と堕性―

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……………………………… …………………ろ ………きろよ 「起きろよ!!」 だんだん近づいて来るかのように声はどんどん大きくなって耳に襲いかかる。 余りにやかましいので目を開けると、友人の姿が。 「たくっ、一体どんだけ寝てるんだか……そんなに寝ると腐るぞ?」 「うっせぇ不法侵入者が…… あれ?今……もう夜の8時か。」 「お前ホントにいつ来ても寝てるよな…とりあえず飯と酒買ってきたから顔洗って来いよ。」 「………まぁ、細かい事はいいか。飯の備蓄も少なくなって来たとこだし有難い。」 テーブルの上に買ってきた惣菜を並べる友人を尻目に洗面台へと向かう。 人と話すのはいつぶりだろうか…… そんな事を考えながら顔を洗い、リビングへと戻る。 買ってきたビールを開け、友人が「おつかれー!!」と乾杯をしてきた。 何にお疲れなんだろうか。 「俺は今日も仕事と嫁で疲れたの!ほら、乾杯乾杯!」 「はぁ………何が楽しくてウチに来るんだか……乾杯乾杯。」 ぷはーっと飲み干す友人を見ながらゴクリとビールを飲む。働いていた頃は楽しみだったこれも、今ではあまり美味しさがわからない。 「それにしてもさぁ、お前いつになったら動き出す訳よ?貯金も流石にやばいんじゃないの?」 ひと息ついた友人が話しかけてきた。 「動き出す気はないさ。まだまだ貯金はあるし、遺産もある。それも尽きれば、生活保護かな?まぁ、どうとでもなるだろ。」 「お前、それでいいのかよ。仕事辞めてから笑わなくなったし、いつも下向きじゃん?生きてるって言わねぇぞ?それ。」 「そういうもんさ。考え方の違いなんてものじゃない。価値観が変わったんだよ。壊れたと言ってもいい。労働にも恋愛にも遊びにも、全く価値を感じないんだ。」 「じゃあ、お前の今思う価値を見出せる事は何なんだよ?」 「睡眠と食事と風呂とストレッチかな。どれもしないと不快になるし命に関わるからな。睡眠以外はしたく無いけどしなくちゃならないってだけだけど。」 「はぁ……そうだ!お前次の日曜、俺んちの近くの公園に来いよ!」 「なんだよいきなり。動きたくないっての。」 「いいからさ、価値観が壊れたなら一度まっさらなモノを見た方がいい!よし、そうしよう!」
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