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翌日、寝不足のまま仕事をこなしたわたしは、少しも嫌な気分じゃない自分を自覚した。
子どもを寝かしつけてから、胸に手を当てる。
季節はもう秋の始まり。窓から入る夜風は少し冷たいのに――手を置いたそこは暖かかった。
少しだけ眼を閉じる。彼の優しそうな顔が浮かんだ。
わたしはぶんぶん、と首を振って、熱くなった頬を冷まそうとする。
いやいや、そんな馬鹿な。これじゃまるで十代の女の子じゃないか。
わたしはバツイチで子どももいて、そんな子どもみたいな恋するような身分じゃない。
たとえバーチャルでも、控えないと。
そんなことを、自分に言い聞かせる。
心が落ち着いて行くのがわかった。
それは、もう終わってしまった夫婦生活で身につけたもの。
心をざわめかせるものを、自分から追い出していく。
それは確かに、わたしを助けてくれた。それがなければ、今日までたくさんあった嫌なことに耐えられなかっただろう。
けれど、と自分に問いかける自分がいる。
今のこれは、嫌なことなんだろうか?
心はざわめく。
それは、あってはいけないことなんだろうか?
わからないまま、けれどわたしは落ち着いていく。
そうして、いつものわたしに戻っていく。
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