四章 霧の中を

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 イベント用に板を作る。参加してくれる人に告知していく。  あなたは、彼と、彼女とコンビです。  それ自体はどうということもない、ただの擬似カップルイベントで、。これがわたしが主催する初めてのイベントってわけでもない。  ただ、メグに―― 「ダイとカップルだよ。盛り上げてね」  ――って打つのが悔しかった。  ダイに―― 「メグとカップルだよ。絶好のチャーンス!」  って打とうとすると、なぜだか指が震えて、打つのに時間がかかった。 「何がチャンスだ」  ダイから来たその返事に、まったくだよねー、って返したかった。  でも、できない。  なぜなら、グルのわたしはわたしであって、わたしじゃないから。  みんなの居場所を守る、明るくて優しくて、いつも笑顔のヒラだから。  だから、返すのはいつものおちゃらけたメール。 「チャンスだよー。メグ可愛いでしょ? うりうり」 「うりうりすんな」  ダイが反応してくれるのが嬉しい。楽しい。  それだけで、頑張れる。  ――ごめん、嘘。  本当は、その楽しさを、優しさを、わたしにだけ向けて欲しい。  自覚した恋心がそう囁く。  わたしは、それに――頷きたい。  でも――できない。  ――だって、ダイが話してくれているのは、わたしじゃなくて、ヒラなんだから。  ヒラはそんなこと言わない。  言ったらきっと――嫌われる。  わたしは他愛もない会話を演じ、そして――もやもやしたものを楽しさで塗りつぶそうとしていった。
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