四章 霧の中を

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 イベントが始まると、参加者はお互いと疑似カップルを演じ始めた。  とはいっても、同じグルでの事、周りからは丸見えなのであくまでも疑似カップルでしかない。  交わされる会話も、ちょっと甘酸っぱいけれど、可愛いものだ。  本人は照れくささを楽しんで、周囲はニヤニヤしながらそのやりとりを見て楽しむ。  それだけ。  本当に、ただそれだけなのに。  わたしは、仲良く二人だけで会話するダイとメグを見て、辛いと感じた。    携帯を閉じて、立ち上がる。子どもは寝室でお昼寝しているから、わたしは一人の時間を楽しんでいた。  そのはずなのに、どうしてこんなに切ない気持ちにならないといけないんだろう?  空気を入れ替えようと窓を開けて、そのままベランダへ出る。見上げる空は、夏空というよりは見事な秋晴れの空だった。  太陽は穏やかな光を放ち、遠くには薄く雲がかかっている。  暖かい光とわずかに冷たい空気。  心が洗われるようだった。 「女心と秋の空、ってね」  深い考えもなく口にした言葉に、わたしは自分で思う。  わたしの気持ちも、変えていかなきゃ、だよね。  ダイともメグとも上手くやっていきたいなら――それしかないんだからさ。  でも――それでいいのかな?  疑問に答えてくれる人はいるわけもなく、わたしは一人空を眺め続けた。  強い風は吹いていなくても、雲はゆっくりと動いていた。
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