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口は悪くて、ぶっきらぼうだけど、あったかい。
春の陽気のせいだけじゃ、ないよね。
颯も弁当を食べ終えると、何を話すでもなく、ただ座っている。
気の抜けた眠そうな顔をしている。
「おっ、部活だ。ごちそうさん。美味かった。あんがとな。」
急にスクっと立ち上がり、
「ほれ。」と言いながらコンビニの袋ごと葉月の手に乗せる。
袋の口から見えたのは、二個のプリンだった。
颯は何の説明もなく、肩掛けのバッグを持ち上げる。
「あ、ありがと。」
プリン二つ、一緒に食べるつもりだったのかな。
葉月は、座ったまま、眩しそうに颯を見上げた。
颯は、二、三歩離れると、振り向いて葉月をじっと見つめる。
「好きな奴、いるんだろ。・・・よかったな、早く立ち直れそうで。」
颯の言葉に、葉月は動けなかった。
急な突風に、桜の花びらが景色を覆うほど乱れ舞い散る。
葉月は思わず髪を押さえ目を瞑る。
風がおさまり、顔を上げた時にはもう、走り出した颯の背中は、見えなくなっていた。
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