第3章 夕凪 ~面影を探して~

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運送会社のバイトと陸上部の練習で明け暮れた大型連休も終わり、 また普段通りの授業が始まった。 なんとなくざわついて、落ち着かなかった四月とは違い、 キャンパスを歩く学生たちは、それぞれの目標を見つけて歩き出しているようだった。 久しぶりの陸上部の休みと休講が重なり、まるまる空いた午後に、 颯は馴染みのバイク屋に顔を出していた。 フランクガレージという小さなバイク屋で、「FG」のロゴの看板がどこか映画で見たアメリカの酒場のように見えた。 店主の船井竜也(ふない たつや)はリーゼントで、いつもコーラ片手にバイクをいじっている。 腕は確かで、颯の年季の入った古いバイクを丁寧に面倒見てくれる。 根っからのバイク好きの主人だ。 そして、純(じゅん)という名前の奥さんがありえないくらいの美人で、 どうして、この男に こんな奥さんがいるのだろうと、颯は常々不思議に思っていた。 「あら、いらっしゃい。」 純が颯に声を掛ける。 「あ、どうも。」 ぴったりした革ジャンの上から、そのスタイルの良さが分かる。 何やら主人の竜也と話している、和やかな空気が漂う。 夫婦って、いいもんだなぁ、と颯は素直に思えた。 「あ、オレちょっとメシ食って来ます。」 親指を立て、目的の場所を指す。 「おう。」 竜也の返事を背中に受けながら、店を出た。 そして、すぐ隣りの小さな洋食屋、「双葉亭」のドアを押すと 客を知らせるベルがなった。
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