第3章 夕凪 ~面影を探して~

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まばらになってきたフロアは、だいぶ静かになり、すぐ後ろのテーブルの客の話し声が聞こえる。 聞くともなしに、耳に入る。どうやら、颯と同じ大学の生徒らしい。 「おまえ、どうすんの?あの眼鏡の先輩。けっこう、脈ありそうじゃん。」 「ん?どうしようかと思ってさぁ。あんまり、入れ込まれると、怖いなと思ってよ。」 「とっとと、一発やったら、サイナラしちゃえばいいじゃん。」 「やっぱ、寂しそうな女に限るね、すぐ、こう潤んだ目で見つめてさぁ。」 「まったく、ゼミの先輩なんかに、手出すなよ、後々面倒だろ。遠山、葉月っていう名前だっけ?」 「ああ、そんな名前。」 「あ、ちょっとぉ、灰皿もらえる?」 エプロン姿の颯に向かって声を掛ける。 颯の背中が固まる。 ゆっくりと立ち上がり、後ろを振り向いた。 「店内、禁煙となっております。お皿、お下げしてもよろしいでしょうか?」 低く、抑揚のない声で尋ねる。その冷たい響きにギョッとして顔を上げる二人の客。 一人は、短い短髪で、手には煙草を持っている。 ギロリと睨みつけると、颯は黙って皿を下げて行く。 そして、戻って来ると 「他にご注文は、ございませんか?お客様。」 なけりゃぁ、とっとと帰りやがれ! 無言の圧力を目いっぱい発しながら、テーブルの傍らに立ちはだかる。 「い、いえ、ありませんっ!」 その迫力になにやら不穏な空気を察し、 二人の客はガタガタと席を立ち、足早に店を出ていった。
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