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「うわっ。つめたっ!」
指先に触れる波は、気持ちよく葉月の足先を洗っていく。
跳ねるように駆け寄っては戻り、繰り返し波と戯れる。
風と波の音だけが、葉月を取り囲む。
ザザァ、ザザァ・・・
いつしか、時のたつのも忘れて、空っぽになっていた。
ふと、立ち止まり、颯の方を向く。
さっきから、動いてないし、連れて来といて、寝ちゃってる?
葉月は、思い付いたように、手を海で濡らすと颯に近づき、その頬に触れる。
「つめてっ!」
颯が片目を開ける。
「何すんだよっ!」
「だって、眠っちゃったかと思って。」
「寝たら、悪ぃかよ!」
「あは、ほんとに寝てたんですね。」
葉月が笑う。
「まったく、犬っころみたくはしゃいでよ~。」
文句を言いながらも、顔は怒っていない。
ムクっと颯は起き上った。
「ふふ、楽しいですよ。」
立ち上がり、ゆっくりと波打ち際まで近づく。
波に足を洗われながら、颯は大きく伸びをする。
「ん~~~っ!」
と大きく伸びをする颯の足を、何度も波が覆う。
「うゎお!冷てぇ!」
「高村君、反応、遅っ!」
葉月が笑いながら隣に立って顔をのぞき込む。
「・・・・・」
颯は、何も言えなかった。
波音だけが二人の間を行き来する。
なんだか、さっきからこいつの顔、まともに見れねぇな・・・。
「あっ!」
急に葉月が声をあげて立ち止まる。
「高村君!ほらっ、貝殻っ!」
葉月が指差した先に、白く光る貝殻が見えた。
引く波にさらわれて、流れていく。
葉月は、小走りに近寄って手を伸ばす。
波にさらわれる一歩手前で、拾うことが出来た。
「見て!」
得意そうに、掲げてみせる。
「わっ!バカ・・・」
颯があわてて腕を引っ張ったが、遅かった。
バッシャーン!
屈んだ体制で、寄せる波をもろにかぶり、葉月はシャツまでズブ濡れになった。
颯も、腰から下が海に浸かった。
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