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にやっと笑うと颯は自分のアイスを差し出す。
「食うか?」
「いいですよぉ。」
プッと膨れて、そっぽを向く葉月の口元にかき氷バーを近づける。
「ほれ。」
「じゃあ、一口だけ・・・」
と言い、パクッと噛る。
嬉しそうじゃねぇか。
葉月の噛る場所がまずかったのか、颯のアイスが崩れかかる。
「おっと、危ねぇ。」
落ちる瞬間、颯は口を大きく開けて、受け止める。
「まったく、人の分まで落とすなよ。」
「へへ・・・」
まったくガキみたいだ。
いや、オレがか?
照れて笑う葉月を、颯も笑って見ていた。
さっきまで静かだった蝉が一斉に鳴き出してお互いの声が聞こえなくなる。
木漏れ日が、眩しくて思わず目を細めた。
言葉が途切れ、葉月の肩が颯の腕に触れる。
蝉の声の中、動けないまま空を見上げていた。
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